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世界一へ緻密な戦略 航空機開発さらに加速

トヨタ自動車と富士重工業の資本・業務提携には、経営不振にあえぐGM支援という意味合い以上に、富士重工の持つ高性能4WD技術や軽自動車技術、さらには航空機技術をグループに取り込もうという狙いがある。GMの経営危機をきっかけに、独り勝ち批判をかわしながら自動車世界一に王手をかけ、一方で航空機事業にまで経営基盤を広げるトヨタの、緻密(ちみつ)な経営戦略だ。
 「まるでタイタニック号のようだ」と例えられたGMの経営の悪化は深刻だ。巨額の従業員の医療費負担を抱えて、新規投資もままならず、そのブランド力の低迷は著しい。
 経営不振は、北米市場を大きな収益源とするトヨタにとって、歓迎できることではない。不満の矛先が日本車メーカーの雄であるトヨタに向かう可能性もあるからだ。
 今回の株式取得の目的についてトヨタは、「GM支援ではない」(木下光男トヨタ副社長)としているが、結果的に側面支援と同等の威力を発揮するのは間違いない。
 しかも、富士重工株の時価総額は四千二百二十七億円と数年前の半分程度。「買い時はベストタイミング」(市場関係者)で、買収に次ぐ買収で財務が疲弊したGMとは逆に、トヨタの提携によるメリットは大きい。
 その一つが「レガシィ」など根強いファンを持つ「スバル」ブランドと、「業界内でも評価が高い技術力」を持つ富士重工をパートナーに持つこと。GMも欲しがった富士重工の技術力が、トヨタの技術力を一段と厚みのあるものにする。
 さらに軽乗用車市場で6%のシェアを持つ富士重工と、トヨタの子会社であるダイハツ工業を技術、販売で結びつけて相乗効果を出せば、軽トップのスズキ自動車を引き離して、グループで軽自動車市場でも強力な力を持つことにもなる。
 一方、自動車分野以上に「将来に結びつく大きなメリット」(自動車アナリスト)と指摘されるのが航空機技術だ。
 「ゼロ戦」を製造した航空機メーカー、中島飛行機が前身の富士重工の最大の強みは、現在も米ボーイング向けの機体製造技術や、航空自衛隊向け戦闘機の開発に生きている最先端の航空機技術。
 米国ではここ数年、小型航空機の需要が急速に拡大。その市場を狙って先行するホンダは、すでに自主開発の小型ジェット機の試験飛行にまでこぎつけている。トヨタも米社と協力して次世代航空機の開発に乗り出しているが、富士重工の技術力を生かすことで、より強力な開発体制を築くことができるのだ。
 トヨタにとって、自動車に次ぐ「ものづくり」の対象となるのが航空機とされる。新たな経営資源として、歴史も実績もある富士重工との協力関係は、トヨタの将来技術への有力な担保にもなるだけでなく、「日の丸航空機」開発を目指す日本の産業界にとっても強力な後押しになる。(比嘉一隆)
(産経新聞)
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